詩の本の思潮社

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編集部から

現代詩文庫『続・粕谷栄市詩集』新装重版出来!

2023年08月31日

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妄想の街角、反世界の詩学

 一枚の紙幣の遠い記憶のなかで、老人たちが眠っている。どこまでも続く街は静かで、点在する彼らを映す、建物の窓もある。永遠に、それは変わらないだろう。
 一枚の紙幣の遠い記憶のなかで、無数の老人たちが眠っている。遥かに、それを見守るのは、偽りの啓示、そうだ、世紀末の小さな幻の三日月である。
(「幻月」)


「粕谷栄市の詩は、酸っぱい狂気の味と血の甘い馥りが濃密に立ちこめた美しい反世界だ」(松浦寿輝)。詩が、人間が、よく生きるための何かであるという、私の錯覚は、強固になった。――長い沈黙を破って書かれた『悪霊』(藤村記念歴程賞)全篇ほか、『鏡と街』『化体』から収録。
解説=横木徳久、墨岡孝、野村喜和夫、福間健二、池井昌樹

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0948-0
2003年7月第1刷 2023年8月第2刷

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現代詩文庫『粕谷栄市詩集』新装重版出来!

2023年08月31日

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魂のはなしをしよう

 私以外には、誰も知らない。遥かに、夥しい水仙の咲くところを、私は知っている。無数の水仙が、常に咲き乱れる、恐怖のようなところだ。
 湿原と呼ぶのであろう。暗く、寒く、絶えて人々はやって来ない。しかし、花々は、限りなく闇を彩る。微風が吹くと、絶叫のような美しさが、一齊に翻える。
(「水仙」)


「粕谷さんは生を詩に翻訳する。選択の余地はない。言語によって人間の生きている現実をとらえようとすれば、少くとも彼にとって、それがただひとつの途なのだ」(谷川俊太郎)。緊密な散文詩形式による幻想の言語で、生のもっとも深い真実をのぞかせる、高見順賞受賞『世界の構造』を全篇収録。未刊詩集『副身』ほか、エッセイも多数収録。
解説=大野新、彦坂紹夫

1650円(税込)
四六判並製・152頁
ISBN978-4-7837-0766-0
1976年6月第1刷 2023年8月第7刷

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『吉原幸子全詩Ⅰ』重版出来!

2023年08月04日

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読み継がれ、あたらしく蘇る


おまへにあげよう
ゆるしておくれ こんなに痛いいのちを
それでも おまへにあげたい
いのちの すばらしい痛さを
(「あたらしいいのちに」)


「他のものやひととの間の、なくすことのできない距離、それが吉原さんの抒情の源ではないのか。どんなになまなましい心理を歌っても、むしろ歌うことで作られる距離に吉原さんは救いを見出しているとも思える」(谷川俊太郎)。血、傷み、愛、裏切り、それらに彩られた、人間葛藤の修羅が燃えさかる詩世界。『幼年連禱』『夏の墓』『オンディーヌ』『昼顔』詩集4冊と散文「自作の背景」収録。装幀=奥定泰之

5500円(税込)
A5判上製・394頁
ISBN978-4-7837-2359-2
2012年11月第1刷 2023年7月第2刷

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現代詩文庫『吉原幸子詩集』新装重版出来!

2023年08月04日

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『幼年連禱』『夏の墓』ほか収録


風 吹いてゐる
木 立ってゐる

ああ こんなよる 立ってゐるのね 木
(「無題(ナンセンス)」)


愛と裏切り、孤独をテーマとしながら、一方で、ちいさきものに惜しみない視線を注ぎつづけた吉原幸子。初期詩集『幼年連禱』『夏の墓』『オンディーヌ』『昼顔』4冊から代表作を収録。作品論=石原吉郎、詩人論=江森國友、山本道子

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0755-4
1973年9月第1刷 2023年8月第18刷

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現代詩文庫『福間健二詩集』新装重版出来!

2023年08月04日

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書くこと、読むこと、生きること

きみはえびの姿勢のままで
だれかと入れかわり、またもとに戻り
そのたびにきみのからだはいい匂いがする
いい気持ちだけど、さびしいよ
青い闇なのに
だれも青いことに気づかない
(「急にたどりついてしまう」)


「福間健二は同時代の路頭を生きる熱情と感傷を繊細かつ自然な呼吸法によって表現している。詩のありかを確実に、きょうという日の側面に固定するかにみえながら、詩の自然さそのものを灯明に、未来とのはなれがたい思いとも、つなげてみせる」(荒川洋治)。ひとりで書いているのではない。ざわめきのなかで、いまを生きながら突きぬけていく、ことばの速度。『急にたどりついてしまう』全篇をはじめ、四半世紀の詩業を収める。
解説=瀬尾育生、鈴木志郎康、新井豊美

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0925-1
1999年3月第1刷 2023年7月第2刷

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