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山本博道『光塔の下で』

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悲哀につらぬかれて


悲しみとか憎しみとか仕返しが
薔薇のトゲで刺さっているのが
ぼくたち人間なのではなかったか
(「トラとライオン」より)


ベナレス、シギリア、台北、ダッカ、バンコク。原色あふれる街々をさまよい歩き、詩人は出会い、見いだしていく。人間の生死のほとりを、母と暮らす東京での日常を――。悲しみと光のなかで描き出す21篇。装幀=芦澤泰偉。


【著者の言葉】

アジアの旅をずいぶんと重ねた。複数回訪れた国もあるが、順を追って、香港、マカオ、シンガポール、台湾、韓国、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、フィリピン、ラオス、マレーシア、インドネシア、インド、ネパール、スリランカ、バングラデシュ。それらを素材にした詩集もこれで四冊目になる。
ぼくが旅をするのは、それぞれの国の見馴れない建物と、視界が掻き消える雨と、うだるような暑さと、街の雑踏と喧騒に、それでも魅了されるからだ。小汚いホテルの部屋に案内されたり、いつ飛ぶとも知れぬ飛行機を待つ時など、大袈裟ではなく、鍛えられていない自分自身にぶつかる。そうした場面は書きつくせないほどだ。然しながら、それだからこそ、ぼくはアジアの街とアジア時間とアジアの人びとが大好きだ。
こんどの詩集は、脊柱管狭窄症の手術とぶつかった。 ぼくはまだコルセットを外せないが、やがてこのコルセットが取れたら、また、熱風の、そして花と魚と人とヤモリと野良犬と、夜が更けるまで屋台溢れるアジアの国々を、旅したいと思っている。

本体2,200円+税
A5判上製・98頁
ISBN978-4-7837-3246-4
2011年7月刊

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