定道明『中野重治近景』

手探りの結実、八つの断章
手探りの結実、八つの断章
時代は過渡して行く。その時代を過渡する人達がいる。時代が気にくわなければ、当面「ない」と言う。「ないない文」である。ストップをかけるわけである。清濁合わせ呑むということがある。「民主主義に賛成する」がそれだとすれば、濁をどうしても呑めないむきは「民主主義に反対しない」となる。心では、そう言うことによって世界は変えられると思っている。世界は変えられないと思っている人達は、絶対に「ない」とは言わない。
(「ないない文について」)
青春の蹉跌と絶望のさなか、著者の心に突如ざわめきのようなものを呼び起こした、あの正体は何であったのか。徹底したフィールドワークと粘りづよい思考、抑制された筆致で、文献以前の領域にある文学者の姿をせり上げる、渾身の労作。装幀=高林昭太
本体2,600円+税
四六判上製・258頁
ISBN978-4-7837-1695-2
2014年8月刊