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編集部から

現代詩文庫『続・清岡卓行詩集』新装重版出来!

2025年05月21日

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詩と小説と批評の〈円環世界〉

長い冬が終るまえに 春が
夢の匂いのようにはじまっている
落葉樹の森の まばらな透明。
その向うでは 海が やがて落日。
(「固い芽」)


映像の飛翔し、明滅し、変幻する速度が詩人の内部にイメージ群を発生させる。そして詩人はそれらを世界として眺め、それらを愛しているのだと言える。そして附け加えれば、飛翔し、明滅し、変幻する肉体的な影像のまさしく宝庫ともいうべき記憶の世界、夢の世界が、清岡卓行の本領であることも、そこから自ずと了得できる問題である。記憶の中の時間や、夢の世界をつつむ空間を、清岡卓行のように非歴史的に、非構成的に脈動させる人物はいないという稀なる事情も、それに伴ってわれわれはこの詩人の特性として受けとらなければならない。
そういう特徴は、かつての『氷った焰』や『日常』の時代だけでなく、『アカシヤの大連』五部作にも変りなく息づいており、この詩人の外見上の柔かさとは打ってかわった、内奥の核質部の堅牢さを証拠立てている。
――高橋英夫

『アカシヤの大連』で芥川賞を受賞、敗戦による引き揚げの経験を濃密に反映する作品を展開、後年、『円き広場』として刊行される初期文語詩篇をはじめ、『ひとつの愛』『固い芽』から厳選収録。詩人論・作品論=飯島耕一、小海永二

1650円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-0895-7
1994年12月第1刷 2025年5月第2刷

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