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海外詩文庫『ウィリアムズ詩集』新装重版出来!

2024年07月09日

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事物を離れて観念はない

思わず
見とれる

赤い車輪の
手押し車

雨水でツヤツヤ
光っている

そばには白い
鶏たち
(「赤い手押し車」)


「詩は、コトバで作られた小さな(あるいは大きな)機械だ。そこには感傷的なものもなければ、余分なものもない」と言い切るウィリアム・カーロス・ウィリアムズWilliam Carlos Williams は、コトバの象徴性から詩を解放しようとした20世紀のアメリカを代表する詩人である。「事物を離れて観念はない」という彼のモットーは、20世紀後半のアメリカ詩を特徴づけるものとなった。産科と小児科医を生業とした多文化主義の詩人は、「反−詩」的な「ここ、いま」の現実から離れることなく詩を創造していった。アメリカ口語の持つ詩的可能性を追究し、ホイットマンが夢みた「アメリカのうた」を歌い続けたが、その実験的な詩のフォームは現代芸術の動向と無縁のものではなかった。ウィリアムズの「詩とは何か」という問いは、ブラックマウンテン派やビート派といったポストモダンの世代に引き継がれ、現在のわたしたちに至る。本書では、初期の名作「赤い手押し車」や、長篇詩『パターソン』から「図書館」を抄録、晩年の傑作「砂漠の音楽」を含む、ウィリアムズの代表作を収録した。

編訳者=原成吉(はら・しげよし)
1953年生まれ。獨協大学名誉教授。著書に『アメリカ現代詩入門――エズラ・パウンドからボブ・ディランまで』など。訳書に『チャールズ・オルスン詩集』(共訳)、ゲーリー・スナイダー詩集『リップラップと寒山詩』、『奥の国』、『絶頂の危うさ』、『終わりなき山河』(共訳)、エッセイ集『野性の実践』(共訳)など。

1980円(税込)
四六判並製・160頁
ISBN978-4-7837-2514-5
2005年7月第1刷 2024年8月第2刷

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